【登壇報告】2023年6月4日(日)「『受刑者にヨガを。』〜プリズンヨガの挑戦〜」

以前ご紹介したイベントですが、参加したスタッフからの報告を今回はお届けします。

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6月4日、マインドフルネスやヨガに関する情報発信をされているティーチャーズ株式会社様からお声がけいただき、「『受刑者にヨガを。』〜プリズンヨガの挑戦〜」と題したオンラインイベントが開催されました。50名以上の申し込みがあり、当日もリアルタイムで30名以上の方にご参加いただきました。当日の様子をご紹介します!

まずは主催者の中場さんより、「受刑者にヨガを」というと遠い世界の話のように感じる方もいるかもしれないが、それは生活の延長線上にあり、つながりの中で見ていったらやはりどこかで接点があることだと考えておられ、中場さん自身が活動の主軸においている「自分自身が生きる道のりの中で恩恵を受けてきたヨガやマインドフルネスを多くの人に伝えていきたい」という想いともつながると開催趣旨をお話していただきました 。     

今回、ヨガやマインドフルネスの実践が、受刑者の更生にどう役立てることができるのか。犯罪に関わった人々に対し、どのようにサポートができるのか。再犯を防ぐために何ができるのか。といったテーマで、PYSC代表の松浦と副代表井上がお話ししました。

代表松浦からは、犯罪を犯した方々の更生になぜヨガや瞑想が有効であると考えるのか、犯罪学理論の一つであるグットライフ・モデルに基づいた説明がありました。また、イギリスのプリズンヨガ団体であるプリズン・フェニックス・トラストでは、刑務所でのヨガの対面指導のほか、受刑者との文通による指導も行なっていると紹介しました。松浦自身がイギリスで実施した受刑者の手紙を分析した調査では、受刑者がヨガや瞑想の実践によって犯罪から縁遠い人生の糧を得ることができる可能性が示唆されたと報告しました。 

副代表井上からは、現在PYSCのスタッフが、受刑者との関わりの中で 大切にしていることや、パーソナルサポートの基本姿勢について説明しました。 また、やりとりを重ねていく中で感じた受刑者の変化について、いくつかの事例を挙げて紹介 しました。 そこには、実践を重ねることで見られた体の変化、他者との関わりの 変化、意識の持ち方の変化や自身の感情に対する気づきなど様々な変化が見受けられました。手紙の文章には刑務所での作業の話やご自身の生い立ちに関する記述などもありました。井上は、手紙を通した パーソナルサポートは、ヨガや瞑想による効果に加え、「書くこと、語ること、そしてそれを受け止められることの力」を 感じると述べました。

最後に、プリズンヨガの可能性について、井上は、受刑生活はある意味で人生を変化させるのに適した時間と捉えることができ、それを「ヨガ」と「語り」両面でサポートすることができるのではないかと感じているとコメントしました。松浦は、活動を通して感情のコントロールができるようになる方や、犯罪に直接関わるような感情が湧いているということに意識が向く方が増えているように感じるとのことで、日常の中でふとした意識の変化や気づきの機会が増えていくような、そんな可能性を感じていると述べました。引き続き、文通を通したパーソナルサポート事業を行いながら、手紙の分析による効果測定を質的調査の手法で行い、その可能性を探究していくという今後の展望を説明しました。

質疑応答では、現在までの活動における具体的な実績や精神疾患のある対象者への対応、受刑者の変化などについて刑務所からのフィードバックはあるのか、PYSCのテキストの入手方法、日本の刑務所で対面指導を行う場合のハードルの高さ、受刑中の方への活動の周知方法、出所後のつながりについて、他団体との連携についてなど、たくさんのご質問をいただきました。また、ラジオ放送や録画動画、メールやオンラインシステムの活用、刑務所内での運動時間や運動会にヨガを取り入れてもらうなどのアイデアや、刑務所だけではなく少年院や児童相談所、学校などでもヨガ・瞑想経験が不可欠だと思うとの感想などもいただきました。時間いっぱい活発なやりとりがあり、実りある時間となりました。

このイベントの収益のほとんどをティーチャーズ様からご寄付いただきました。ティーチャーズ様、ご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました!